崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 黒い騎士服をびしっと着込んでいるが、体の線の細さは隠しきれない。

「今日は早いのだな?」
「はい。昨日は雨で訓練できなかったから、今日は昨日の分までやろうと思います」

 アイリスはそう言うと、下ろしていた髪を組紐でひとつに結ぶ。そして、一部の髪がほつれ落ちたことに気付くと、それを摘まみ上げた。

 レオナルドはその様子をじっと観察した。

 ──どおりで華奢なわけだ。

 男にしては不自然なまでに細い手足は、女性と思えば違和感がなかった。
 ふとアイリスがこちらへと視線を向けて首を傾げる。

「閣下、どうかされましたか?」
「……いや、なんでもない」

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