崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 じっと見過ぎて不審に思われてしまったようだ。
 アイリスは不思議そうな顔をしたが、すぐににこりと笑った。

「髪が伸びてきたので、切ろうかと思いまして」
「そのままでいいのではないか?」

 レオナルドは首を横に振る。

 貴族令嬢にとって、長く美しい髪はとても大切なものだと聞いたことがある。女心はあまり理解できないが、アイリスにとってもそれは同じではないかと思ったのだ。

「結んでいれば邪魔にならないだろう」

 アイリスは目を瞬いてから、摘まんでいた一房の髪を見つめる。

「では、そうすることにします」

 素直に従ったその様子から、本当は髪を切りたくないのだと言うことは予想がついた。

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