崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 父の弟を聞いても、ぴんとこなかった。焦げ茶の髪と瞳は確かに父と同じだったけれど、それ以外はちっとも似ていなかったから。

 引き締まった体躯で凜々しかった父に対し、シレックのお腹は妊婦のように突き出ていて、中には何が入っているのだろうと不思議に思ったほどだ。

「二人きりでは大変だろう? 叔父さんが来たからにはもう大丈夫だよ。これからは後見人として助けるから、安心するといい」

 後見人がどういうものかはよく知らないけれど、どうやら両親が亡くなって仮のコスタ子爵となっているディーンを補佐する立場なのだということはわかった。

 ──叔父さんがいてくれるなら、もう大丈夫よね?

 不安そうにシレックを見つめる弟の手を、アイリスは安心させるようにぎゅっと握りしめた。


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