崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「一旦引くか?」
カインが反対側の壁に背を預け、アイリスをちらりと見やる。
「しかし、私達が引けば計画の一部が崩れてしまいます」
アイリスは首を横に振った。
息を潜めて耳を澄ますと、微かに物音が聞こえた。
「下?」
「そのようだな」
アイリスは階下に目を向ける。壁に取り付けられたランプの明かりで、仄暗い階段がぼんやりと浮かび上がっている。暗くて、階段の先は真っ黒な洞窟に繋がっているかのように見えた。