崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
ガラン、ゴロン、と鐘の音が鳴り響く。
──まずいっ!
すぐに、仲間を呼ぶための合図だとわかったが、ここで逃げ出すわけにもいかない。背後からドタバタと複数の足音が聞こえてきた。
「何事だ!」
勢いよくドアが開け放たれ、見張りと思しき大男達がなだれ込む。
「我々は皇都騎士団です。違法薬物の制作と所持の疑いで連行します」
アイリスの声に、男は拍子抜けしたような顔をしてにやりと笑った。
「なんだ。非常時の鐘が鳴ったから何事かと思ったら、一人はガキじゃねえか。やっちまいな」