崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 顎をしゃくるような合図に、後ろに控えていた大男が剣を抜く。
 アイリスとカインも咄嗟に剣を構えた。

 足に力を入れて一気に攻撃にかかる。こちらが二人に対して相手は見張り役の大男六人と武器を持たない作業員の男が四人。十対二とかなりきついが、少しの時間を稼ぐくらいならなんとかなるだろう。

 しかし、予想に反して雇われの大男達は剣が立った。もしかすると、流れの傭兵でもしていたのかもしれない。さらに、いつまで経っても応援は来なかった。

「くそっ、まだか」

 カインが苦しげに叫ぶ。
 アイリスも必死に、剣を受け流した。

 ──なぜ、誰も突入してこないの?

 さすがにこの人数の剣に身の覚えがある者を二人で相手にするのは無理だった。
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