崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 ざっくりと切れたように感じたが、驚いたことに傷口は殆ど塞がりかけていた。相変わらず、この人が作る薬は抜群に効き目がいい。

「そう。よかった」

 ホッと息を吐いたカトリーンが、新しいガーゼを宛がってまた包帯を巻いてゆく。続いて胸部や足も同じように観察してゆき、最後に「ごゆっくり」と微笑んで部屋を出た。

 その数分後、再びカチャリと音がした。カトリーンが何か言い忘れでもしたのかと思ってそちらを見たアイリスは、そこに現れた人物を目にした途端、表情を強ばらせた。

「閣下……」

 ドアの前には、レオナルドがいた。
 レオナルドはアイリスの顔をチラリと見ると、後ろ手でドアを閉じる。カチャンという音が、シンとした部屋に響き渡る。

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