崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました

 ──治せない。

 その言葉を聞いた瞬間、暗雲たるものが胸の内に広がるのを感じた。

 カインは入団一年目の騎士の中で、特に有望であると師団長からも報告が上がっていた。前途洋々たる輝かしい未来が広がっていたはずなのに、その道が絶たれたのだ。

「カインにそのことは?」
「いいえ、伝えていないわ」
「なんとか治す方法はないのか?」

 カトリーンはじっと考え込む。

「さっきも言ったとおり、魔法薬で治すのは限界があるの。あり得るとすれば──」

 カトリーンはレオナルドにひとつの可能性を告げる。
 それは、高度な治癒魔法を使いこなせる者に治してもらうという方法だった。

< 171 / 300 >

この作品をシェア

pagetop