崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「報告内容に間違いはないか?」
「ありません。複数回に亘って関係者から聴取しました」
「……」

 レオナルドがグレイルに調査させているのは、先日の違法薬物摘発事件でのことの顛末だった。

 入念な計画がされて隊員達にも事前説明がされていたにも拘わらず、一組の隊員──ディーン──本当の名はアイリスだが──とカインが先行突入して大怪我を負った。助かったからよかったものの、もう少し遅ければ二人とも死んでいたかもしれない大怪我だった。

 このときの経緯に関して、少々不審な点があった。

「ということは、第五師団長は指示を出していないのだな?」
「はい。一緒にいた副師団長にも確認しましたが、そのような指示はしていないと」
「だが、アイリスとカインは指示を受けたから突入したと言っている」
「はい。そこの情報の錯綜がどうして起きたのかがわかりません。しかも、受け取った指示書は内容に従って燃やしてしまったようなのです」
< 174 / 300 >

この作品をシェア

pagetop