崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「叔父様。確認したいことがございます」
「なんだい?」
「先月なのですが、高級紳士服にドレス、貴金属などたくさんの支出がありました。ディーンはあの調子なのでもちろんのこと、私も作っておりません」

 ああそれか、とシレックは頷く。

「私はコスタ子爵家の当主の後見人をしているからね。その私がみすぼらしい格好をしてみろ。周囲からコスタ子爵家が没落しているとあらぬ誤解を招きかねない。そんなことはさせられないからね、これは必要経費だ」
「それにしても、多すぎるのでは──」

 コスタ子爵家ではぎりぎりまで支出を抑えている。アイリスの社交界デビューのドレスですら、母の遺品から一番綺麗だったものを繕って着たのだ。

「アイリス」

 シレックの声が一段低いものへと変わる。

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