崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 アイリスがその薄茶色のワイバーンの首を撫でると、ワイバーンは気持ちよさそうに、また喉をゴロゴロと鳴らした。

 レオナルドがその様子を見つめて優しく目を細めたことには、気が付かなかった。

 ◇ ◇ ◇   

「さてと、いよいよね……」

 その日、ワイバーンの世話を終えたアイリスは、キュッと唇を引き結ぶと自分の姿を見下ろした。

 今日の昼間にやって来たレオナルドは、帰り際のアイリスに執務室へ来るようにと申し伝えた。
 執務室に呼び出されるのなんて初めてだから、きっと自分の処分が決まったのだろう。

 黒の騎士服を着たこの姿も、今日で見納めになるだろう。
 入団した日から今日までのことが走馬灯のように甦り、アイリスは慌てて首を振る。

 ──しっかりしないと。せめて、ディーンは罪にならないように誠心誠意お願いしてみよう。

 アイリスは自分を叱咤すると、レオナルドの執務室へと向かった。 

< 182 / 300 >

この作品をシェア

pagetop