崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「魔法って凄いのね……」

 アイリスの呟きに、カインがいいことを思いついたとばかりに顔を明るくする。

「そうだ。ディーンの弟も治して貰えないかな? 俺の怪我が治ったくらいだから──」
「それは難しいだろうな。リリアナ妃は皇后であり、医師ではない。今回が特別だ」

 カインの言葉を、レオナルドがぴしゃりと否定する。

 カインは残念そうに眉尻を下げたが、アイリスは気にするなと軽く微笑んで見せる。

 魔法でディーンを治して貰えるなら、どんなにいいだろう。
 けれど、一国の皇后に一介の子爵家の人間の治療をしてほしいなど、無理だということはアイリスにもわかる。

「だが──」

 レオナルドが続けて口を開く。

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