崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 そこでふとアイリスは気が付く。
 なぜカインはここに呼ばれたのだろうかと。

「カイン、剣を握るのはあの事件ぶり?」
「ああ。実はそうなんだ」

 カインはバツがわるそうな顔をする。

 ──やっぱり……。

 レオナルドはきっと、剣を握らなかったブランクで本人が辛くならないようにと気を遣って呼び出したのだ。

 久しぶりに剣を構えてカインと向き合う。

 カン、カン、キンという小気味よい音が鼓膜を揺らす。
 その様子を腕を組んで眺めていたレオナルドは、時折二人の動きを止めさせるとアドバイスをくれた。

 アイリスはこの後小一時間ほど、レオナルドの指導の下でカインと汗を流したのだった。

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