崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「女でそんなに戦えるなんてすげえよ。俺はお前以外に見たことがない」
「男みたいね」
「そんなことない。俺はディーン……ちがった、アイリスのこと、綺麗だと思うぜ」

 故郷にいる俺の恋人の次に、とカインは付け加える。

 アイリスは思わず吹き出した。
 この実直さがカインのいいところだ。きっと、本気で言ってくれているのだとわかる。

「ありがとう、カイン」

 アイリスがお礼を言うと、カインもホッとしたように笑う。しかし、その表情はふと何かを思いだしたかのようにすぐに真顔に戻った。

「そう言えば、あの日俺達がもらった指示書について、師団長が調査しているらしい」
「調査?」
「ああ。第一師団のセリアンは第一師団内で配られた指示書に俺達宛のが混じっていたから届けたといっているらしいんだが、第一師団の全員がそんなもの知らないって言っているらしいんだ。もちろん、第五師団長もそんな指示は出していないって」
「そう……」

 アイリスはじっと考え込む。
 では、あの指示書は誰がなんのために用意したのだろうか。答えがわからない気味の悪さに、アイリスはぎゅっと自分の身体を抱きしめた。


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