崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「はい」

 呼ばれたアイリスは一礼してリリアナの元に歩み寄ると、背後に起立した。

「違うわ。ここよ」

 リリアナはポンポンと自分の横にあるソファーの座面を叩く。

「しかし……」

 アイリスはリリアナの護衛だ。
 皇后であるリリアナと共にローテーブルを囲むなど許されない。
 リリアナはそんなアイリスを見て、頬を膨らませた。

「いいから座って。ひとりでお茶をしていてもつまらないわ」

 どうしたものかと視線を彷徨わせると、リリアナ付きの筆頭侍女であるナエラと目が合う。
 ナエラがコクリと頷いたので、アイリスは恐縮しながらもソファーに座った。

「このお菓子、美味しいのよ。是非召し上がってね。この前陛下とお忍びで城下に行ったときに見つけて気に入ったの」

 リリアナは焼き菓子の載った皿をアイリスの前に差し出す。
 可愛らしい、花形に焼き上げた菓子だ。

< 200 / 300 >

この作品をシェア

pagetop