崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「なんで……」

 魔法薬を処方してもらってからというもの、ディーンは見違えるように体調がよくなっていた。そろそろ騎士団への入団試験に備えて本格的な訓練を再開しようかと思っていた矢先の出来事だ。

「カトリーンさんに相談に行かないと」

 アイリスは手紙を握りしめると、魔法薬を調薬してくれた宮廷薬師──カトリーンに相談しようと部屋を飛び出した。

 アイリスが調薬室に飛び込んだとき、カトリーンはちょうど魔法薬の調薬をしているところだった。カウンターの上には様々な薬草や突然現れたアイリスに驚いた様子だったが、その表情を見てすぐに只事ではないと気付いたようだ。

「アイリスさん、どうしたの?」
「ディーンが、弟が……」

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