崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 これまで宮廷薬師であるカトリーンが自主的にこの執務室を訪ねて来たことなど一度もなかった。
 レオナルドは訝しく想い眉を寄せる。

「珍しいな。どうした?」

 レオナルドはカトリーンを執務室にあるソファーに座らせると、自分はその向かいに座った。
 いつにない険しい表情から、何か深刻な問題を相談しようとしていることは想像が付いた。

「以前、皇都騎士団の方達が押収した違法薬物の分析を私達宮廷薬師したでしょう?」
「ああ」
「同じものが、地方で使われているのを見つけたの」
「なんだと? どこでだ」

 身を乗り出したレオナルドを、カトリーンはピンク色の瞳で真っ直ぐに見つめる。

「コスタ領よ。コスタ家当主のディーンさんの薬に、押収した毒物が混じっていたわ」
「コスタ領?」
 
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