崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
    ◇ ◇ ◇


 ──それにしても。

 リリアナ妃の元に到着したアイリスは、部屋の壁際に立って自分の姿を見下ろす。

 きっちりと着込んだ白い近衛騎士の制服が目に入る。腰には近衛騎士団入団にあたり皇帝陛下より直々に賜った長剣がぶら下がっており、袖口にも短剣が仕込んである。

 ──本当に、女らしさなんて皆無ね。

 顔を上げると、リリアナ妃は今日も皇后に相応しい豪華な衣装を身に纏い、美しく着飾っていた。
 今日は新しい衣装を作るために仕立屋を呼んだようで、熱心に生地を選んでいる。

 リリアナ妃は元々天女のように美しい人なのだが、身に纏う服、顔の横で揺れる耳飾り、シルバーブロンドの髪に付けられた髪飾り、隙なく施された化粧、それらが彼女の美しさをより一層引き立てていた。
 さらに、近付くと花のように甘く魅惑的な香りがすることも知っている。
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