崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
──私とは、全然違うわ。
同じ女性でありながら、あまりの違いに苦笑してしまう。
今の自分は、リリアナ妃はおろか先ほど見かけた美しく着飾ったご令嬢達の足下にすら及ばないだろう。
アイリスの体のラインは細く華奢だが、皇都騎士団に入団してからの厳しい訓練の結果、『柔らか』というよりは『引き締まった』という言葉がしっくりとくる。
少し伸びてきた髪はいつも後ろでひとつに結んでおり、髪飾りを付けることはない。ましてや、化粧などまったくしない。
──これじゃあ、色仕掛けなんて絶対無理よね……。
先ほどカッとなって自分からジェフリーに言った言葉に、思いの外落ち込んでいる自分がいる。
更には先日、叔父のシレックの捕縛の際は勤務時間中にも拘わらず感情を乱して見苦しいところを見せてしまった。あれ以来、羞恥のあまり朝の訓練の際もレオナルドと目を合わせることができない。