崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました

「ねえ、アイリス。こちらとこちら、どちらがいいと思う?」

 二枚の生地を体に合わせていたリリアナ妃が、こちらを振り返る。一枚は淡い水色、もう一枚はリリアナの瞳と同じ色──薄紫で、どちらもよく似合っている。

「そうですね。どちらもお似合いですが……淡い水色のほうでしょうか。染め付けてある白牡丹がとても素敵です」
「やっぱりアイリスもそう思う? ふふっ、水色は陛下の瞳と同じ色だわ」

 リリアナ妃は嬉しそうに微笑むと、水色の生地を自分に当てて鏡の前でポーズを取る。

 まるで妖精のよう、天女のよう、とリリアナ妃の美しさを称える言葉をたくさん聞いてきたが、その姿を見たアイリスは全くその通りだなと思った。

 一通り生地を選び終えたリリアナ妃と目が合うと、リリアナ妃がパッと目を輝かせる。悪戯を思いついた子供のようなその表情に、アイリスはなんだか嫌な予感がした。

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