崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「嫌いではないなら、用意させて。さっきも言ったとおり、わたくしがアイリスが着飾るところを見たいのよ。そうだわ、アイリスはもう少ししたら十八歳の誕生日でしょう? だから、そのお祝いにするわ。それならいいでしょう?」
「……はい。仰せのままに」

 これは主であるリリアナ妃に従ってのこと。
 そう言い聞かせるのに、浮き立つ心を落ち着かせるのは難しかった。

 ──宮廷舞踏会か……。

 幼い頃、いつかアイリスだけの素敵な騎士様がエスコートしてくれるはずだと母は笑っていた。一年弱前、初めて参加した宮廷舞踏会でその夢は見事に打ち砕かれたが。

 ──レオナルド様に初めてお会いしたのも、宮廷舞踏会だったわよね。

 華やかなドレスを着れば、少しは自分も彼から綺麗だと思ってもらえるだろうか?
 目の前に広がる艶やかな生地を眺めながら、アイリスはそんなことを思った。

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