崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「婚姻の解消といっても、既に子供が生まれたのでは?」

 アイリスが宮廷舞踏会でスティーブンを殴り飛ばしたとき、背後にいた少女のお腹には命が宿っていたはずだ。時期を考えると、間違いなく生まれているはずだ。
 今はまだ、生後数ヶ月といったところだろう。

「ああ、生まれた。淡い茶色の髪に緑の瞳の、可愛らしい男の子だそうだ」
「淡い茶色の髪に緑の瞳?」

 アイリスは眉根を寄せる。
 スティーブンは黒目黒髪だった。一緒に寄り添っていた少女も、うろ覚えだが淡い茶色の髪に緑の瞳ではなかったように思う。

「祖父母からの遺伝でしょうか?」
「祖父母にも淡い茶色の髪や緑眼はいないらしい」
「それは……」

 跡継ぎである子供が生まれて間もないこの時期に、離婚の申し立て。
 アイリスは何が起こっているのか、大体のことを理解した。

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