崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「だから、もうそんな馬鹿なことを考えては駄目よ。春になれば、ディーンは元気になって騎士団に入るのだから。さあ、お誕生日のお祝いに一緒にケーキを食べましょう?」

 アイリスはディーンに笑いかける。
 それは、たった二人きりの、ささやかな祝宴だった。


    ◇ ◇ ◇

 
 部屋に戻ったアイリスは、じっと考え込んだ。
 家庭教師の職など、本当はない。けれど、どうにかしないとコスタ子爵家はあの叔父に乗っ取られてしまうだろう。

 考えても考えても名案は浮かばない。本来であれば、この春にはディーンが帝国の騎士団に入団し、あの叔父の後見人期間も終わるはずだったのだ。

「……そうだわ」

 アイリスの中にひとつの考えが浮かんだ。
< 27 / 300 >

この作品をシェア

pagetop