崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「もう、気は済んだ?」
「うーん、まだ心配だけど……」
「大丈夫。姉さんは歩くだけなら完璧な令嬢だから」
「それ、どういう意味?」
「剣を振り回したりしなければって意味」

 からかうようにディーンの口の両端が上がる。
 アイリスは目をぱちくりとさせ、意味を理解するとディーンの胸を叩こうと手を伸ばす。

「もう!」

 ディーンは軽い身のこなしでひょいと攻撃を避け、アイリスの手は宙を切る。ディーンは逆に片手をこちらに差し出した。

 むうっと口を尖らせるアイリスを、ディーンは真剣な表情で見つめた。

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