崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「姉さんには本当に苦労をかけたから、感謝している」
「なあに、急に。二人っきりで過ごしてきたのだから、助け合うのは当たり前でしょう?」
「それでも、言いたかったんだ。今度の春には俺が騎士団に入団するから、後は任せて。姉さんは望む道に進んでいいよ。どんな選択でも、応援するから」

 アイリスは曖昧に表情を濁す。
 ディーンはたったひとりの家族であり、双子の弟だ。
 アイリスが今考えていることを、薄々感づいているのかもしれない。

「びっくりさせちゃうかもしれないわよ?」
「男装して僕に成り代わろうとすることより驚くことなんて、ないって断言するよ」

 ディーンは陽気におどけると、にこりと笑う。

「さ、行こうか」
「ええ」
 
 アイリスも釣られたように笑みを零すと、ディーンの手を握った。


< 274 / 300 >

この作品をシェア

pagetop