崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
レオナルドは上質なフロックコートを身に纏ってはいるものの、特に女性をエスコートしていなかった。そのことに、ホッとしてしまう自分がいた。
レオナルドは次々と挨拶に来る貴族達を軽く受け流しながら、会場内をゆっくりと歩いている。
きっと警備の状況を確認しているのだろうとすぐに予想がつき、アイリスはふふっと笑う。
そのときだ。
可憐な雰囲気の少女が、レオナルドに近付くのが見えた。
アイリスは足を止め、表情を強ばらせる。
少女は愛らしい微笑みを浮かべ、レオナルドに声をかける。何を話しているのかは聞こえないが、その頬はほんのりと紅潮していた。
「姉さん?」