崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 急に立ち止まったアイリスの顔を、ディーンが訝しげに覗き込む。そして、アイリスの視線の先を追った。

「もしかして、あそこにいる方が姉さんの話してくれたレオナルド副将軍?」
「ええ」

 アイリスはレオナルドを見つめたまま頷く。
 他の女性と話しているのを見るだけで、ざわざわと気持ちが落ち着かない。

 ディーンはそんなアイリスを見つめ、また遠方にいるレオナルドを見やる。レオナルドと話していた少女が少ししょんぼりした表情を浮かべて離れていったのを確認すると、アイリスの耳元に口を寄せた。

「姉さん。閣下に紹介してもらっても?」
「え? ええ、もちろんよ」

 アイリスは頷き、胸の前でぎゅっと手を握ると覚悟を決めてそちらに歩み寄った。

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