崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「もしかして、閣下は私にここに残れと仰っているのですか? 嫌です」
「なぜ?」
「では教えて差し上げます。閣下は全く気が付いていませんでしたが、私、閣下をお慕いしておりますの。閣下が他の女性を娶って幸せな姿を横目に見つつ、自分がこのまま騎士として女を捨てた人生を送るなんて、まっぴら御免です」

 閣下からするとこのような男のような女に好かれて迷惑でしょうけれど、と付け加えてアイリスはぷいっとそっぽを向く。

 レオナルドが体が小さく普通なら足手まといになる『ディーン』を気にかけたのは、彼が上司であったから、そしてアイリスの父をレオナルドが知っていたからだろう。
 けれど、アイリスはそんなレオナルドに惹かれて恋をした。

 レオナルドは皇帝の側近であり、この若さでハイランダ帝国の副将軍。当然、貴族令嬢から熱い眼差しを向けられていることも知っている。
 そして彼女達がアイリスよりも女性的で美しく、そして身分も高いことも。

< 286 / 300 >

この作品をシェア

pagetop