崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「誰が迷惑だと言った」

 レオナルドの静かな口調が、夜に溶ける。

「女の相手は面倒だが、お前の相手は飽きない」

 アイリスはレオナルドのほうを振り返り、形のよい眉を寄せた。

「珍獣を相手にしているみたいで面白いと言われているみたいですわ」
「お転婆で破天荒な上に、ああ言えばこう言うんだな」

 眉を寄せたアイリスの眉間を解すように、レオナルドの指先がなぞる。

「アイリス、知っているか? 俺が美しいと思った女は、世界に一人しかいない。お前だ」

アイリスは元々大きな瞳を更に大きく見開き、レオナルドを見上げた。

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