崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 ──この人が助けてくれなかったら、刺されて死んでいたかも……。

 こちらを真っ直ぐに見下ろす男は、冷ややかな眼差しでアイリスを見つめる。

「その勇敢さは素晴らしいが、勇敢さと無謀は隣り合わせだ。そして無謀はときに命取りになる。よく覚えておけ」
「ごめんなさい、放っておけなかったの。助けてくれてありがとう」

 男の言うとおりだった。だからこそ、反論ができずにアイリスは俯く。
 実戦をした経験がないくせに、大丈夫だと甘く見ていたのだ。

「いや、こちらこそ盗人の捕獲に協力してくれて助かった。礼を言おう。今後はこういうことは帝都騎士団に任せて──」

 男がそう言いかけたとき、アイリスはハッとした。

「帝都騎士団? あっ。あーーー!!」

 帝都騎士団! 今日が入団式なのだ。

 薬屋に入るときにあと一時間あると思っていたけれど、すでにぎりぎりの時間になっているはずだ。

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