崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 ──急がなきゃっ!

 こんなところで油を売っている場合ではない。アイリスはすぐに道端に放り出していた自分の荷物を纏める。

「助けていただきありがとうございます。申し訳ありませんが行かなくてはっ!」
「え? おいっ! 怪我はないか?」

 背後で、男が焦ったように叫ぶ。

「大丈夫ですっ」

 アイリスは一度だけ振り返ると、そう叫ぶ。
 ぺこりとお辞儀をすると、一目散に走り出した。
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