崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「ここ、いいか?」
「どうぞ」

 アイリスは一人の男に声を掛けられて、そう答える。

「俺はカインだ」

 隣にドサリと座った若い男が、にこりとアイリスに笑いかける。黒髪に黒目の大柄な男で、日に焼けて男らしく凜々しい雰囲気を纏っていた。

「はじめまして。ディーン=コスタです」

 そのとき、背後の席から不機嫌そうな声がした。

「コスタ? 道理で場違いな奴がいると思ったらコネか。子供が来る場所じゃねーぞ」

 ちっと舌打ちする音が聞こえて振り返ると、不機嫌そうに口元を歪めた男がいた。この国ではよく見る茶色い髪に茶色い瞳で、凡庸な顔立ちをしている。

「子供ではありません。十七歳です」

 アイリスはムッとしてそう答えた。

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