崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「声まで女みたいに高いな」

 小馬鹿にしたような物言いに、周囲から失笑が漏れる。確かに、アイリスは今日ここに集まった十数人の中で一番小柄だった。声も高いことは否定しない。
 だって、本当は女だし。

「お前みたいなひ弱な奴が混じると、代々騎士をしている連中みんなが役立たずみたいに見られて迷惑なんだよなー」

 アイリスは何も答えず、ため息交じりにそう漏らした目の前の男を観察する。今の物言いだと、この男も代々騎士家系出身なのだろう。
 コスタ子爵家もそうだが、代々騎士家系の家門の者は本来なら何段階もの選抜がある入団試験が免除される。

「わたしはディーン=コスタです。あなたは?」
「俺はジェフリー=エイル。エイル子爵家の三男だ。ちなみに、兄上達も皇都騎士団で一人は第一師団長、もう一人は第三師団の副師団長をしている」

 目の前の男──ジェイルは自慢げにそう語った。
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