崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 遥か前方から、悲鳴のような甲高い声が聞こえた。目を懲らすと、二人の男が群衆の合間をすり抜けて走っているのが見えた。

「盗人か!」

 地上で周辺の見回りをしていた帝都騎士隊の隊員も気付いたようで盗賊を追おうとしているが、人が多すぎて思うとおりに馬を進めないようだった。人混みで無理に馬を進めると善良な市民を傷つけてしまう。
 
「仕方がない、俺が始末しておくか。ザイル、あっちだ」

 レオナルドはワイバーンを操り、盗人が逃げた方向へ飛ぶ。
 そして、その先の光景に目を瞠った。

 そこには、一人の少女がいた。
 歳は十代後半だろうか。肩口までの長さで切られた髪は、金色に近い琥珀色の美しい色をしている。
 男女どちらも着るような長ズボンと膝丈の上着姿で、手になぜか掃除用の箒を持ち、盗賊と一対二で対峙していた。

< 54 / 300 >

この作品をシェア

pagetop