崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 仰向けに倒れたまま踏みつけられた男は恐怖で顔を引き攣らせ、顔面を蒼白にさせた。
 ようやく群衆から抜け出て駆けつけた帝都騎士団の団員が駆け寄り、男が縛り上げられる。それを確認し、レオナルドは背後にいる少女に向き直った。

「大丈夫か?」
「あ、ありがとう」

 ゆっくりと上がった視線がレオナルドと絡み、翡翠のような美しい緑色の目が大きく見開く。

 ──こいつ……。

 以前、舞踏会で見かけた破天荒な令嬢に似ている。
 しかし、髪が短いし格好もまるで男のようだ。

 あれだけ戦えるのに血を見たことはないのか、少女は片手を切り付けられて痛みに悶える盗人を見て真っ青になっている。
 そのちぐはぐさが、またレオナルドの興味を惹いた。
 
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