崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
    ◇ ◇ ◇


 新たに皇都騎士団に配属された新人騎士のお披露目試合を視察したレオナルドは、執務室戻ると各師団長達が仮決めしたという配属先の載った新人名簿に目を通した。

「さきほど見た、線の細い奴がいるだろう?」
「線が細いというと、ディーンですか? コスタ家の嫡男なので期待していたのですが、外れでしたね」

 グレイルは両手を上に向けて肩を竦める。
 ハイランダ帝国のコスタ家といえば、代々皇帝を守り続けてきた名門騎士家系だ。先代の当主は近衛騎士団長を務めていただけに、期待は大きかった。
 けれど、現れたのは女のように線の細い男で、先ほどの試合も一方的に押されていた。

「彼は当たり障りのない第二師団にしようかと──」

 グレイルが配置予定を説明する。第二師団は宮殿の内壁を守る隊だ。宮殿には二つの壁──内壁と外壁がある。第二師団は皇帝が生活する内城へ不審者が侵入しないように目を光らせる役目を負っている。

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