崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「何をしている。お前も訓練に来たのではないのか?」
「はい。ですが、閣下のお邪魔でしょうから──」
「邪魔ではない。ちょうどいい、相手しろ」
「え?」

 見上げると、レオナルドは差し出した指先を手前に動かし、訓練場の中央へ入れと指し示した。

「私がですか?」
「お前以外に誰がいる?」

 逆に聞き返され、アイリスは戸惑った。
 相手は皇都騎士団のトップで、団員でもそうそう近付くことはできない人だ。自分などが手合わせさせてもらっていいのだろうか。

「早くしろ。時間がない」
「はい、すみません」

 アイリスはぺこりと頭を下げると、慌てて訓練場の中央に向かった。
 剣を握って構えると、掛かってこいとレオナルドが顎をしゃくる。

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