狼くん、ふれるなキケン!
まだ初夏にもなっていないというのに、ひなが着ているのは、なぜか半袖半ズボンのパジャマ。
ほんと、頭おかしい。
なるべく見ないようにしても、どうしたって目につく。
白くてほっそくて、でも柔らかそうな太ももとか、二の腕とか。
「……だから言ったんだっつーの」
『もっと警戒しろよ』
男と暮らすってどういうことか、わからせてやろうと思った。噛みついて、怖がらせて、近寄らなくなればいいと思った。
結局なんにも伝わってなかったみたいだけど。
惜しげもなく晒すそれらに、よこしまな気持ちを抱く獣がいることを、知らないんだろうか。
それとも、知っててわざと?
ここにいるのが他の男だったとしても?
「……」
わからない。
何考えてるのか、ほんとうに、わからない。
────“あのとき” からずっと、それまで一番よく知っているつもりだった彼女の心は、誰よりも難解で、永遠に考えたってわかりそうにない、どんな謎よりミステリーだ。