狼くん、ふれるなキケン!
「……せめて髪乾かしてから寝ろよ」
ついでにちゃんと自分の部屋で寝ろ。
困る。困るんだよ、本気で。
ここは紛れもなく俺の家、昔から住み慣れた、何も変わらない家のはずなのに。
ひな、たった一人が増えただけで、自分の家じゃなくなってしまったみたいだ。全然、落ち着けない。
「んー……む、う」
きゅうに、ひなが身じろぎする。
その拍子にもとから短かったパジャマの裾が、何の拷問なのかまくり上がる。肌色の面積が増えて、かなりきわどい位置。
うざい。
視界に入ってくるすべての情報がうざい。
「……ろ、うくん……?」
「あ?」
なに、起きた?
それなら好都合────と思ったのに。
「うるさい……です、狼くん……、ひなが食べちゃいますよ……」
寝言かよ! と心の中で叫んだ。
意味わからない寝言を聞かされたかと思えば、ひなは呑気にふにゃふにゃ笑って、またすーすーと落ちていく。