狼くん、ふれるなキケン!
どんな夢だよ。
アホくさ……と呆れつつ。
じっさい、食べられそうになってんのはどっちだと思ってんだか。
「……ばかひな」
結局やっぱり起きる気はないらしい。
そのまま放置してもよかった。
たぶん、最適解はそれだった。
……のに。
「……」
ブオオン、とドライヤーの音を他人事のように聞きながら思う、ほんと、俺、何してんだ。
放っておいて寝ればよかった。
だけど、なぜかできなかった。
結局のところ、リビングまでドライヤーを持ち出してきて、濡れたままのひなの髪の毛を乾かしている。
さっきから「何してんだ」って頭の中で自分に突っ込んでは、「風邪ひかれたらふつうに困るし」ってもうひとりの自分が答えていた。
「……細」
ドライヤーの熱風轟音でも目覚める様子のないひなの図太い神経に一周まわって感心しつつ、おそるおそるひなの髪に触れて、指でとかす。
ひなには、あまり触れたくないし触れられたくもない。
頭がおかしくなって、なにも考えられなくなるから。
そっと触れた髪の柔らかさに驚いた。
自分のと全然違う。
細くて、ちょっと乱暴にしたら簡単にちぎれてしまいそう。