狼くん、ふれるなキケン!



「……ありえねー」



チッ、と舌打ちひとつ。
そうでもしないと、もう、なんか、無理。



こいつ、下着つけてないんだけど。
ほんと、マジで無理。



抱えている背中に本来なら感じるはずの感触がないことに気づいてしまって、頭を抱える。



ばかにも無防備にも程がある。
ミラクルバカ、と心のなかで思いっきり毒づいた。




「……感謝しろよ」




ふつうに、ありえないから。

無自覚でもここまで煽っておいて、その辺の男だったらとっくに食われてるから。




ちりちりと燻った熱のほうをあんまり直視しないようにしながら、ガチャリ、と扉を押し開ける。

ひなの部屋、もともとは桜くんが使っていた部屋。




「はー……」




ベッドにとん、とひなを横たえて。
深く息をつく。


ようやく息を吸えたような気がする。
生きた心地がしなかった、なんかもう丸一年分の体力を持っていかれたような気さえする。




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