狼くん、ふれるなキケン!
ATTENTION 5: 無記名・不正行為は0点です!
- side ひな -
◇
「狼くん、狼くん」
返事がかえってくるはずもなかった。
しゃこしゃこ、と歯みがきの音がふたり分響く洗面所にて。
並んで歯みがきをすることをゆるしてくれただけでも、ラッキーだと思ったほうがいいのかもしれない。
「狼くんの寝ぐせ、芸術的ですよね」
とはいえ、突っ込まずにはいられなかった。
昨日の朝も思ったんだけど、狼くんの寝起きの髪の毛、どうなってるのってくらいアーティスティックにぴょんぴょん跳ねている。
毛先があちこちに向いていて面白い。
どんな寝相なら、そんな風にクセづくんだろう……。
「前髪なんか、トサカみたいですよ」
オオカミなのに、ニワトリだ。
ふふ、と思わず笑うと、不服そうな狼くんの瞳が上からぎろっと落ちてきた。
そして口を開いたかと思えば。
「……ひなは鳥の巣」
「……!?」