狼くん、ふれるなキケン!


そんな淡い期待は一瞬にして打ち砕かれた。



「なわけないだろ」

「ええ……っ」

「……なに、ひなの目には俺がそんなに優しい人間に見えてる?」

「う、それは半々というか」




ちょうどはんぶん。

優しい狼くんも、意地悪な狼くんも、私のなかでははんぶんずつの割合で存在している。





「でも……っ」





納得できないことだってある。

だって、昨日ほんとうに、自分の足で部屋に戻った覚えがない。



お風呂からあがる狼くんを待っていたの。

それは狼くんとちょっとでも話したかったから……なんだけど、結局その先の記憶がおぼろげだ。


食い下がる私を一瞥して、は、と浅く息を吐き出した狼くん。




「……ぜんぶ、ひなの勘違い」

「そんなっ」

「つーか、ひなぜったい重いし」




俺じゃ運べない、なんて嫌味っぽく言ってくる。




「重くないです……!」




いじわる!
かちんときて、思わず言い返してしまったけれど。



いや待てよ。重いかもしれない。

とあとから冷静になってじわじわショックを受けた。




さいきん体重計すら乗っていなかったもんね。
狼くんに、太ってるって思われるのはなんかやだ……!



これからはちゃんと体重管理しよう、とひっそり心に誓う。




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