狼くん、ふれるなキケン!
◇
「あれ、ひなちゃん今日めずらしーね」
学校につくなり、隣のまやくんに捕まった。
いや、話しかけられたといった方が正しい、捕まったというのは語弊がある、けれど……。
「めずらしい……?」
「髪型、ポニーテール」
じっさいは新学期がはじまってまだ数日。
まやくんと顔を合わせたのもその数日だけで、それだけでめずらしいってなんだかなあ、と思う。
でもたしかに、髪の毛はおろすか下の方でまとめているかが多いから、がばっと全部あげてしまうのはめったにないかも。
「なんだか暑くって」
「暑いって。今からそんなこと言ってたら夏溶けるよー?」
まやくんがくすくす笑う。
その間にも興味津々にポニーテールを見つめているようだったから。
「もしかして、変ですか?」
「へん?」
「や、ポニーテール、似合ってないのかなって」
純粋に不安になって聞いただけだった。
……んだけど、さすがはまやくんというか。
切り替えはほんの一瞬、甘ったるい表情と、どこから出してるんだってくらいお砂糖たっぷりの声色で、甘やかすみたいに。
「むしろその逆」
「逆って……っ、ひゃ」
「超かわいーよ、美味しそう」