狼くん、ふれるなキケン!
安売りのかわいい、はこの際放っておくとして、『美味しそう』は意味わかんないよ……!
私は食べものじゃないし、人間を見て抱く感想じゃない……!
教室の片隅、あっさりと私を囲ったまやくんは、なにが面白いのか指先でつつつ……と私の肌をなぞりはじめる。
頬から顎先をつたって、首の方へ向かっていくその動きに、ゾクッと肌が泡立って身ぶるいした。
「っ、まやく……っ、それ、くすぐった……ぁいからっ」
「はー、ほんと、いい声で鳴くよね」
楽しそうに口角をあげたまやくん。
じわっと潤んだ瞳で睨みあげる。
「やめてくださいっ、てば!」
動きが一瞬とまったその隙に、まやくんの指先からなんとか逃れた。
手のひらで防御壁をつくる私にまやくんは笑っている。
タチが悪い。
「まやくんはいちいち距離が近いです……」
「それはさー、ひなちゃんがいちいちかわいー反応するからじゃん」
「してないっ!」
「いじめがいがあるっていうか」
「頼んでないですっ、……っひゃっ」