狼くん、ふれるなキケン!


「あの、狼く……」




思わず口を開けば、手首にぎり、と力が加わった。

そして噛み殺さんばかりの冷たい視線がひたすら貫いてくる。

あまりにも冷たかったから、体がびくっと竦んだ。




「なにその手」




頭のなかにたくさん浮かんだはてなマークを、そのまま言葉にしたのはまやくんだった。

私の手首をしっかり握っている狼くんの手のひらを一瞥して、まやくんが言う。



わからないことばかり。

今、私を見下ろす狼くんの瞳は、どのときよりもびっくりするほど冷たいのに、強い力で離してくれない手のひらは、火照っているくらいあつい。




そんな目で見るくせに、どうして離してくれないの?

ふれるのも、見るのも、いやなんじゃないの?

そもそも、どうしてこんな、とつぜん────。




「狼くん、えと……、痛い、です」



どんどん強まる力に、そう言うのが精いっぱいだった。



だって、考えても、ぜんぜんわからなかった。



まやくんに冗談でキスされそうになって、そしたら、急に。

急に引き寄せられて、気づけば狼くんの腕の中で、そのまま解放してくれない。





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