狼くん、ふれるなキケン!


どうしてこんなことするの。

掴まれた手首が痛いのと、訳がわからないのとで頭のなかがぐるぐるして、じわっと涙が浮かんでくる。



そんな私に、狼くんははっとしたように急に手を離した。



おとずれる解放感、それを少し寂しいと思ってしまうなんて、私はちょっとおかしくなっているのかもしれない。



加えられていた力の強さを可視化するかのように、私の手首には手錠みたいな狼くんの手のひらの跡が残っていた。




「は、カンケーないって言ってたくせにね」




まやくんがからかうように笑う。
そして、狼くんに向かって言葉を重ねた。




「ひなちゃんとおれが、キスしようが何しようがなんとも思わないんじゃなかったっけ」

「……どうせ本気じゃないだろ」

「あーれ、それなら『本気ならオッケー』っていう風に聞こえるけど、だいじょーぶ?」




狼くんは何も答えなかった。



まやくんと狼くんがどうしてこんな険悪になっているかはこの期に及んでぜんぜんわからない。だって、もともとあまり接点のないふたりだし……。



だけど、今なにを話しているかなら、耳をすませて聞いているうちに、断片的にわかったかもしれない。






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