狼くん、ふれるなキケン!
「ふ、お楽しみタイムもここまでかー」
私に向かって目くばせして、ちょっと笑って。
それからまやくんは道枝さんの方を振り返った。
「あーあ、ゆっきーってほんと空気読めないよねー」
「はあ!?」
「今ちょーどいいとこだったのにさあ」
残念、なんてぜんぜん残念そうじゃない表情で言うまやくんに、道枝さんは目の端をつりあげている。
だてに “天敵” ってわけじゃなさそう。
「ゆっきー、まさかタイミング見計らってジャマしにきたのー?」
覗き見とかイイ趣味してんね、と嫌味っぽくまやくんが付け足す。
もちろん、心の底からってわけじゃなく、道枝さんのことをからかっているのであろうことは、その表情を見ればすぐにわかったけれど。
「なわけないでしょ! 真矢が近原さん教室から引きずり出した挙句、戻ってこないから……!」
「引きずり出したってのは語弊があるでしょ。先に教室飛び出したのはひなちゃんの方だしねー?」
「それで追いかけ回したのなら一緒!」