狼くん、ふれるなキケン!



「藤川くんもいたんだ……」



呟いて、それから道枝さんはゆっくりと。
まやくん、私、狼くん、と順番に見渡した。



そんな彼女の頭のうえにはわかりやすくはてなマークがふわふわ浮かんでいる。

どういう組み合わせ? という疑問がありありと見てとれた。




でも、言わせてほしいよ。

私だってどうしてこんな状況になっているか、ぜんぜんわからないの。



謎の状況に、ちょっと考え込むような素振りをみせた道枝さんだったけれど、結局答えは出なかったようで、ちょっと困ったように眉を下げたあと。



「と、とにかく……! 戻らないと、教室! 授業はじまっちゃう!」

「わっ!」




道枝さんは気を取り直したように私とまやくんの手をとって、教室の方向へ駆けていく。

去り際に道枝さんは狼くんの方を振り向いて。




「藤川くんも! 遅刻しちゃだめだよ!」




どこまでもしっかり者の彼女らしいセリフ。

道枝さんに手を引かれるまま、つられて狼くんの方を振り返る。




「……っ」





すると、何の偶然か。

ぱちりと、狼くんと目が合ったような気がした。







────そして、私とまやくんは、道枝さんのおかげで、なんとかチャイムの音の余韻のところでぎりぎりすべりこみセーフで間に合ったの。


心の底から道枝さんに感謝してなむなむ手を合わせて拝んだことは言うまでもない。





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