狼くん、ふれるなキケン!
思わずまじまじと見つめてしまう。
お箸が入れ替わって……?
そんなこと、ふつう、友だち同士で起こりっこないよね……。
きょとんと瞬きを繰り返す間にも、道枝さんはまやくんからお箸を受け取って、何事もなかったかのようにお弁当を広げていた。
「近原さん?」
フリーズした私の顔を道枝さんが心配そうに覗きこむ。
それで、はっと我に返った。
「や、なんでもない、です……っ」
「そう?」
こくこく、と首を縦にふる。
やっぱり道枝さんとまやくんの間には何かあるのかもしれない。
その謎はまったく解けないまま、だけれど。
今はこのままでいいかな、と思う。
変に探りを入れるようなことでもないし、誰しも一つや二つ、ひみつごとというのはあるもの。私が首を突っ込んでいいことかどうかなんてわからないもん。
「そういえば」
卵焼きを箸先で器用につまみながら、道枝さんがふと思い出したように口をひらいた。